私の職掌は事務職です。営業事務と呼ばれる職種で、営業課のなかにいて営業担当者の活動を事務処理の面で支える業務を担います。
営業事務に関心をもったのは学生時代の経験からでした。当時、3時間ほどの生放送のラジオ番組でアシスタントパーソナリティを務めていました。リスナーに楽しんでもらう番組にするためチーム一丸となって制作に取り組むにはさまざまな下支えが必要です。特に生放送では、機材トラブルなどの不測の事態が起こったとき、即興でその場をおさめなければなりません。特に、放送事故を避けるため、焦りを声に出さずに場をつなぐ対応力が養われました。
卒業を控え、社会人になってからは何か新しいことに挑戦したいと考えました。ラジオ局で場を先読みして番組の流れを下支えした経験を活かし、誰かをサポートする職に就きたいと思ったのです。そこで志望したのが、営業担当者の活動を支え職場の役に立てる営業事務の仕事でした。
入社の決め手となったのは人の温かさです。面接時、あまりの緊張に息継ぎを忘れていた私の様子を見た面接官が「ラジオの生番組に出演していた永川さんでも緊張するのね」と笑って場を和ませてくれました。その後の対話も楽しい雰囲気に包まれ、温かい社風に「ここで働きたい」と惹かれました。
とはいえ、業務が常に順調だったわけではありません。ラジオ局では当意即妙に場をおさめる即興性が重宝されましたが、営業事務に求められるのは何より正確であること、また真摯な営業活動につながる着実さでした。お客さまからの問い合わせにさっと応えようとして確認せずに前回の価格を回答してしまい、間違いを指摘され慌てて修正したらそれも間違いだったというミスの上塗りで、お客さまや営業担当者に迷惑をかけたこともあります。即応力はスピードだけでなく一つひとつの業務を正確に確認し着実に遂行してこそのもの、この積み重ねがあってのプロなのだと痛感しました。
私が担当するのは、テールアルメ(※)等の受発注や在庫管理、納期調整など多岐にわたる事務作業です。見積対応や発注、在庫調整や納入手配が営業担当者の見込み通りに進むよう、事務処理の側面からサポートしています。入社当初は知識も浅く、営業担当者の言動を読み違えて失敗することもありましたが、経験を重ねていくうち、営業担当者の意図や目的を汲み、先を読んだ対応が少しずつできるようになってきていると感じます。
※テールアルメ:道路などに使用する補強土壁。盛土でつくる壁が崩れないよう、鋼材を使用して土を補強する。
営業担当者が外出中、お客さまから緊急の依頼がくることがあります。帰りを待っていると間に合わないため、関連するメールを読んで意図や優先度を把握し、各項目を正確に確認して準備。営業担当者から対応依頼の電話が来たときには、迅速な対応ができるように心がけています。お客さまや営業担当者から「間に合ったよ、本当に助かった」との声をいただくのが大きなやりがいです。
営業事務は社内外の方々との連携が不可欠です。信頼ある関係性を構築し、お客さまや取引先だけでなく社内の誰からも気軽に話しかけられて頼られる存在でありたい。そのためには、業務の知識と経験をしっかり積み上げていくことも重要です。先輩方は、書類にさっと目を通すだけで間違いを指摘できる鋭さと深い知識を持っていました。私も先輩を目指し、正確で素早い判断ができる知見を日々磨いています。
社内外のみなさんから「永川さん、お願いできるかな」と頼られ、どんな困難なお願いごとにもその場で解決案を取り出す猫型ロボットのように課題解決策の引き出しをたくさん用意して、即応力をつけた「スーパー営業事務」になって期待に応えていくのが私の目標です。
始業時は、緊急対応があることを想定しメールをチェック。飛び込み依頼に即応できる準備を整えます。期日の迫る書類の対応や急な見積り作成など、スピードが求められる業務が集中します。一つひとつの業務を迅速に、かつ正確に処理することを心がけ、営業担当者が安心して外回りに出られるよう、頼れる裏方として事務所を守る重要な時間です。同期たちとの昼食でエネルギーを充填したら、午後も引き続き営業担当者やお客さまからの様々な依頼に対応します。そして、諸手続きが円滑に進むよう事務処理をこなし、区切りの良いところで退社します。仕事の時間は全力で誰かのために働き、退勤後は自分の時間を大切に。このメリハリが毎日の原動力となっています。