私は、主に建物の安全を支える免震・制震装置の営業を担当しています。この装置は、震度6強や7といった大地震が発生しても建物の揺れを軽減でき、高層ビルはもちろん、災害時でも機能維持が求められる病院や自治体の庁舎といった中・小型の建物にも数多く導入されています。
私は、大学では国際関係学を専攻し、就職活動を始めた当初は建設と建築の違いさえ理解していなかった、完全な文系女子。そうしたなかで出会った当社ですが、合同説明会で女性社員がとてもイキイキと説明していたのが印象的でした。工学的な知識がない不安よりも「この人たちと一緒に働いたら面白いだろう」と、働く「人」への魅力が入社の決め手となりました。
入社後は、先輩から「残業しないで」と指導がありました。これは、一見やさしい声掛けのようですが、「1年目のレベルで残業しているようではそれ以上の仕事は任せられない」という意味合いで、厳しいけれど前向きな働く姿勢として目からウロコでした。そのおかげで効率的に仕事を進める力が身についたと感謝しています。
私の仕事は、鋼材市況やプロジェクトの動向といった情報提供を行う「種まき」から始まります。そこで得た情報をもとに、当社が扱う免震・制震装置を提案します。案件が具体化すれば、今度はゼネコンと価格交渉を行い、契約後は製品が現場に納入されるまで責任を持ってフォローします。特に免震装置の営業は建物の性能を左右する設計段階から深く関わるため、ものづくりの工程を含めた面白味を感じます。
この仕事の最大の醍醐味は、社会的な影響が大きいプロジェクトに携われることです。例えば横浜に完成した大規模なコンサートホールなど、ニュースになるような「地図に残る仕事」に関われた時は達成感もひとしおです。時には数億円規模の案件を扱うためプレッシャーも大きいですが、その分、厳しい交渉を乗り越えて契約をまとめた時の充実感は格別です。メーカーと顧客の間に立ち、双方に寄り添いながら長期的な信頼関係を築き、価値を提供し続けることが私たち商社の重要な役割だと考えています。
商社の存在意義は、きめ細やかなフォローと長期的な関係構築にあります。2〜3年かかるプロジェクトもあり、地道な活動が信頼につながります。交渉相手も様々で、情の深い方や理論的な方など、相手のタイプに応じた対話の力が求められます。
入社当初は「若手」で、かつ業界では少数派の「女性」というだけで悔しい思いもしました。同じ説明をしても男性の先輩に重ねて確認が入るなど「信頼されていない」と感じたこともあります。それでも、業界用語や製品の特徴などをコツコツと覚え、ていねいな対応を重ね続けました。
転機となったのは入社5年目。それまでとは桁数の違う大規模な案件を担当した際、上司との同行を打診したところ、先方から初めて「村井さん一人で大丈夫だから」と言っていただけたのです。一人の担当者として認められた瞬間であり、大きな自信となりました。この信頼は、お客様との接点をずっと絶やさなかったからこそ得られたものだと考えています。
私が目指すのは、誰もが働きやすい職場環境の実現です。私の部署では子育て中の男性社員が定時で帰宅してお迎えに行くなど、性別に関係なく互いのライフスタイルを尊重する文化が根付いています。働きがいや仕事の醍醐味といった価値観は人それぞれ。年齢や性別、職位による考え方の違いを超えて職場の誰もが尊重しあい助けあう風土が、制度の改良や職場の風通しのよさなどから少しずつ形になっていることを感じます。家庭の事情など何でも安心して話すことができ、「お互い様」と協力しあえる体制を築いて支えあう環境を目指し、業務の知識と経験を積んでいきたいです。
プロの世界だからこそ厳しい言葉を投げかけられることもあります。なかには若さや女性といった属性による偏見もあるとは思いますが、その多くは純粋に経験不足や知識不足を指摘した叱咤激励だと感じています。このように、自分を成長させるための糧として受け止めるポジティブさで、自分らしく学び、これからに活かしていきたいと考えています。
メールと新聞情報の確認から1日が始まります。一般紙だけでなく専門紙にも目を通し、新たな建設プロジェクトの計画情報を収集します。それらの情報から、関わりがありそうな設計事務所を営業先としてアプローチする戦略を立てます。それを週に一度の社内会議でも共有し、進捗状況や直面するトラブル、納期の遅延情報など重要な情報交換を行います。午後は事前にアポイントメントを取った設計事務所やゼネコンへの営業訪問などを行うほか、納入時の搬入路の確認など直接現地に赴いて対応することもあります。定時は17時15分。報告書作成やヒアリング内容の共有、翌日の打ち合わせ準備など区切りのよいところまで業務を進めて退社します。直行直帰も可能なため状況に応じて柔軟に勤務しています。